オリジナル小説

第五話:お祭りと、初めての約束

あの甘酸っぱくも心臓に悪い「皿洗い」の夜から数日。エリアンは完全に、クラリスの家の「常連」と化していた。毎日のように人間の姿に擬態しては、薪割りを(手加減しすぎて逆に時間がかかりながらも)手伝ったり、遠くの街の珍しい果物(懐の宝物庫から空間...
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第3話:内ももプレス、閉店後のウチ

夕方。遠くで、後夜祭の準備の物音が聞こえる。行列の波が、ようやくちょっと引いてきた。窓の外は、茜色。学園祭も、もう、終わりが近い。そして。何度も、何度も並び直したあの子が。とうとう、行列の、最後の一人になった。「……いらっしゃい。もう何回目...
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第2話:先輩と特別サービス

教室のざわめきが、さっきより増してる。断続的な水音と、笑い声と、順番待ちの気配。お昼を過ぎるころには。ウチは、まあまあ手洗いに慣れてた。何人洗っただろ。男子も、女子も、先生も。指の股も、手首も、もう目つぶってても洗える。最初のあのバクバクは...
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第1話:看板娘は自称・経験豊富

遠くで軽音部の演奏が聞こえる。呼び込みの声。大勢のざわめきと、足音。「はいはーい、二年二組『ハンドソープランド』、もうすぐ開店でーす! そこの君、手ぇ洗ってかない?」我ながら、なんて出し物を宣伝してんだろ。ハンドソープランド。女子が、ハンド...
ちいさな誘惑者と、僕の理性

第一話:襲撃はいつも突然に

大学の講義が休みの日、俺——蓮(れん)は、自室でノートパソコンに向かってレポートを作成していた。静かな部屋に響くキーボードの打鍵音。このまま集中して一気に終わらせる。そう意気込んでいた俺の平穏は、背後から響いたけたたましい音によって破られた...
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第二話:精の刑架、折れぬ背

内臓が、押される。 胃が、肺が、下からぐいぐいと圧迫される。息が、まともに吸えない。満ちていく熱が、私の身体の内側の空間を、一つ残らず精で埋めていく。冷たい石畳の上で、私の腹だけが獣の体温で、じっとりと熱を持っていく。 この気色の悪さを快い...
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第一話:広場の姫、獣の質量

どこか遠くで、鐘が鳴っていた。低く、長く尾を引く、弔いのような音。 鎖の音で目が覚めたわけではない。 眠ってなどいなかった。 両手首を後ろで縛る麻縄が夜の間じゅう肌を削っていた。石畳の冷たさが薄い囚人衣を通して背骨まで這い上がってくる。それ...
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第四話:初めてのぬくもり、初めての味

クラリスの小さな家に帰ってきた二人は、さっそく夕食の支度に取りかかった。といっても、料理の経験など微塵もないエリアンは、椅子の座面を壊さないように慎重に腰掛け、調理場に立つクラリスの背中をじっと見つめることしかできない。コトコトと小気味よい...
あの娘の暴走は止まらない!

あの娘の暴走は止まらない!

高校2年生の俺、赤木 晴斗(あかぎ はると)の朝は、いつも最悪のパニックから始まる。「おーい、はーると! 起きないと遅刻しちゃうぞーっ!」ガサゴソと布団が揺れたかと思うと、容赦なく上から降ってきた、柔らかくて、かつズッシリとした心地よい重み...
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第三話:不器用な騎士と、迫る影

クラリスと約束した、裏山への薬草摘みの日がやってきた。「護衛」という大役を任されたエリアンは、この日も凄まじく張り切っていた。なにせ、愛する少女を不届きな魔獣から守る大チャンスなのだ。彼は人間に擬態した姿のまま、クラリスの家の前で彼女を待っ...