悲恋

オリジナル小説

不純な動機、純粋な恋

春の雨が降っていた。放課後の昇降口で、彼は傘を忘れたことに気づいた。「最悪だ……」誰に聞かせるでもなく呟いた声は、雨音にかき消される。彼――二年生の朝倉悠真は、しばらく空を見上げていたが、やがて小さくため息をついた。そのときだった。「使う?...
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冬の灯

港町に初雪が降った日、彼女は古びた時計店の扉を押した。潮風にさらされた看板は文字も薄れ、店先には誰も足を止めない。それでも店の奥では、無数の時計が規則正しく時を刻んでいた。カウンターの向こうにいた青年は顔を上げると、少し驚いたように目を見開...
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消えゆく境界

彼は少女に繋いだ糸から、工房に興味が向くように仕向けた。工房へ少女が現れたのは、それから数日後のことだった。朝から降り続いていた雨がようやく止み、濡れた石畳が鈍く光っている。彼は作業机に向かい、人形の指先を削っていた。扉を叩く音が響く。来客...
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壊れゆく物

彼は若くして国に認められた稀代の人形師だった。木と糸と布に人間と見紛う命を吹き込むその技は神業とまで称され、多くの貴族や王侯が彼の作品を求めた。名声も富も、誰もが羨む未来も、すべて彼の手の中にあった。そして何より、彼には将来を誓い合った女性...