エンジニア部の部室。
午後の陽が差す窓際で、ヒビキが無言でタブレットをこちらに向けている。
映っているのはAVのワンシーン——男優が「先っちょだけだから」と囁くところで一時停止されていて、画面の端にはヒビキの筆跡で「?」とだけ書かれた付箋。
「説明しましょう!」
コトリが椅子から弾けるように立ち上がる。
「『先っちょだけ』はアダルトビデオにおける頻出フレーズのひとつです! 統計的に見ても先っちょだけで済んだ事例はほぼゼロ——つまりこれは実質『全部入れますよ』の前置きに過ぎないのではないかと! そもそも男性器の先端部、いわゆる亀頭は神経終末の密度が最も高い部位であり、その刺激だけで抑制が効くという仮定自体が——」
「コトリ、論旨はわかった」
ウタハが工具の油を拭きながら口を挟む。
「問題は実証さ。挿入深度を先端部に限定した場合、本当にそれ以上の進行を抑制できるのか——理論だけじゃ不十分だ。検証してみよう」
「……被験者、女性側。わたしがやる」
全員の視線がヒビキに集まる。
いつもの無表情のまま、小さく手を挙げている。
その目がいつもより輝いているのは、気のせいではない。
「動機を聞いてもいいかい?」
「……科学的好奇心」
間髪入れずに答えたが、目が泳いでいた。
十五分後、先生が部室のドアを開けると三対の目が一斉にこちらを向く。
「先生、ちょうどよかった。今日の実験に被験者が必要でね」
ウタハがメモ帳を片手に歩み寄る。
「……嫌な予感しかしないんだけど、何の実験?」
「被験者同意書です! もう用意してあります! ちなみに第三条に『実験中の一切の中断要求は原則として棄却される』と明記してありまして、第五条には——」
「待って、どういう実験か先に教えて——」
コトリの書類攻勢をかわそうとした先生の袖を、ヒビキがくいっと引く。
「……先生のデータが、必要」
上目遣い。
反則だった。
「……で、なんで僕がズボン脱がされてるわけ?」
パイプ椅子に座らされた先生の声が虚しく響く。
ヒビキはもうベルトを外し終えていて、細い指がトランクスの縁にかかっている。
「実験プロトコルに従っているだけです! まず被験者の性器を露出し、基準となる——」
「コトリ、計測の準備を頼むよ」
ウタハがストップウォッチとバインダーを構える。
その隣でコトリが、震える手でメジャーを広げていた。
スルッ
トランクスが引き下ろされて、半勃ちのペニスが露わになる。
ヒビキの目が、据わった。
獲物を見つけた猫の目。
瞬きもせずに、じっと見つめている。
「……おおきく、なってく……」
細い指が伸びて、亀頭の輪郭をそっとなぞる。
先生の体がびくっと跳ねて、ヒビキの手の中でペニスが硬さを増していく。
指先に透明な先走りが糸を引いて、ヒビキの喉がこくりと鳴った。
「ひ、ヒビキ! それは観察ではなく明らかに愛撫の——」
「……観察。形状の確認」
小さく首を振るが、指は離れない。
親指の腹で裏筋をなぞり上げると先生が短く声を漏らして、ヒビキの耳がわずかに赤くなった。
「ヒビキ、実験に移ろう」
ウタハの声で我に返ったヒビキが、スカートのまま先生の太ももを跨ぐ。
自分でクロッチをずらした指先が、てらてらと光っている。
「……準備は、できてる」
小さな呟き。
視線を逸らしたまま、細い腰がゆっくりと沈んでいく。
ぬるっ……
先端が濡れた割れ目に触れて、ヒビキの肩がぴくりと跳ねる。
「実験開始、14時32分。挿入深度——先端部のみ」
ウタハがバインダーにペンを走らせる。
くちゅっ
先っちょだけ。
約束通り、亀頭が膣口をわずかに押し広げただけの浅い挿入。
「っ……ん……」
ヒビキの吐息が震えている。
小柄な体を強張らせたまま動かないように堪えているのに、内腿がかすかに痙攣している。
スカートの裾から覗く結合部は亀頭を咥え込んだだけの浅さなのに、膣口のふちがひくひくと脈打って、もっと奥をねだるように蠢いている。
「現在の挿入深度は推定3センチです! 先端部の刺激により膣口付近の神経終末が——えっと、あの……」
コトリの解説が失速する。
目の前で繋がっている二人の体から目を逸らせないまま、顔が耳まで赤い。
「ヒビキ、状態を報告してくれるかい」
「……きもち、いい……なかが、亀頭の、かたち……わかる……」
ぼそぼそと漏れる言葉に、部室の空気が詰まった。
ヒビキの華奢な肩が小刻みに震えていて、先生のシャツを掴む指に力が入っている。
先生は歯を食いしばっている。
先端だけとはいえ、ぬるりと熱い粘膜に包まれた感覚が腰の奥を痺れさせている。
動くな、と自分に言い聞かせるだけで精一杯だった。
ヒビキの膣壁が呼吸に合わせて脈動して、亀頭を柔らかく締めつけてくる。
「経過時間2分。被験者の心拍は上昇傾向——」
ウタハがデータを読み上げようとした、その瞬間。
ずるっ
腰が、数センチ落ちた。
ヒビキ自身が一番驚いた顔をしている。
「っ、あ……っ」
猫みたいな細い声。
無表情が溶けて、半開きの唇から甘い息が漏れ続けている。
「ヒビキ、深度制限を超過してるよ——」
「……わかっ、て……もどす、から……」
ぐちゅっ
ヒビキの腰が持ち上がる。
亀頭の縁が膣口に引っかかるところまで浅く戻して——けれど、体が覚えた深さを忘れられない。
そのまま先ほどより深く沈み込んだ。
「……っあ、ぁ……だめ、もどせ、ない……からだ、が……」
膣壁がきゅうっと締まって、先生の腰から力が抜ける。
ヒビキの体が覚えてしまった快楽を、理性ではもう止められない。
浅く抜いては深く沈む——その振幅がじわじわと大きくなっていく。
ぐちゅっ
ずちゅっ
ぐちゅぅっ
「ん……っ、んんっ……はっ、あ……っ」
もう先っちょだけではない。
ヒビキの華奢な腰が上下するたびに、結合部から湿った音が部室に響く。
猫耳型のヘッドギアが揺れに合わせて カタカタ と鳴って、普段の冷静な姿との落差がひどい。
ウタハのペンが止まっている。
バインダーを握る指先が白くなっていて、きつく閉じた太ももの奥が疼いているのを、本人だけが知らないふりをしている。
唇を噛んで視線を手元に戻そうとするが、ヒビキの喘ぎ声が耳の奥に絡みついて離れない。
コトリは完全に黙り込んでいた。
「説明しましょう」の一言すら出てこない。
スカートの裾を握りしめていたはずの右手が、いつの間にか太ももの内側に滑り降りている。
本人は気づいていない——結合部から溢れる水音に合わせるように、指先がスカート越しに股間をなぞっていた。
先生が両手でヒビキの腰を掴む。
細い腰骨が掌にすっぽり収まって、その華奢さに一瞬ためらう。
止めようとしたのか、それとも——どちらでもよかった。
その手が触れた瞬間、ヒビキの動きがさらに激しくなる。
「っ、あ……せんせ、の、おくまで、きて……っ」
ぐちゅっ
ぐぢゅっ
ずちゅっ
ぐぢゅぅっ
ヒビキの腰が止まらない。
振り落とすように、搾り取るように、華奢な体が先生の上で揺れ続けている。
涙が一筋、紅潮した頬を伝って落ちた。
痛いのではない——気持ちよすぎて溢れた涙だった。
「ヒビ——」
「……もう、むり……ぜんぶ、いれてっ……」
ずぶっ!!
根元まで。
一気に沈み込んだヒビキの背中が弓なりに反って、喉の奥から搾り出すような声が零れる。
「ぁ——っ!!」
先生の腰が跳ねた。
もう限界だった——奥に押しつけたまま、そのまま出してしまう。
びゅるるっ!!
びゅるっ!
ぴゅっ……
最後の一滴まで膣内に注ぎ込まれて、ヒビキの指が先生のシャツに食い込む。
小さな体がびくびくと痙攣して、やがて糸が切れたように先生の胸に崩れ落ちた。
精液を受け止めた子宮が熱を持って脈打っているのが、繋がったままの先生にも伝わっている。
しばらく、誰も動かない。
ヒビキがとろんとした目のまま、先生の上から降りようとしない。
繋がったままの結合部から精液が滝のように逆流して、白い太ももを伝っていく。
「……あったかい……なかに、いっぱい……」
まだ中に残る感触を確かめるように、ヒビキの腰が小さく揺れる。
先生のシャツに顔を埋めたまま、猫が喉を鳴らすような吐息を繰り返している。
コトリの目が、ヒビキの太ももを伝い落ちる白い筋に釘付けになっている。
目を逸らそうとして、けれど視線だけが結合部に吸い寄せられたまま剥がれない。
スカートの中に潜り込んだ指が、びしょびしょに濡れたパンツの上から股間を押さえている。
いつスカート越しからそこに辿り着いたのか、本人にもわからない。
ぐちょ、と指の下で小さな音が鳴って、コトリの肩がびくっと跳ねた。
ウタハが長く息を吐いた。
乱れた前髪を掻き上げて、かすかに震える手でバインダーにペンを走らせる。
「……仮説通りだね。先っちょだけでは済まない——実験終了、14時41分」
「普通こういうのって、我慢できないのは男の方じゃないの……?」
先生の力ない呟きに、誰も答えない。
ヒビキの腕だけが、ぎゅっと先生のシャツを握りしめていた。


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